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災害・緊急時に備えて、お子さんの特性をどう用意しておく?|紙1枚で持ち出せる備え方

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玄関の明るい木の床に置かれた、開いたグレーの防災リュック。ベージュのニットを着た人が、印刷した冊子をリュックに入れようとしている。手前のポケットには小さなポーチ・懐中電灯・モバイルバッテリー・水のペットボトルが並んでいる

お子さんの特性をまとめた資料は、ふだんは先生や支援者に渡すために使います。相手は、お子さんのことをある程度知っている人です。

この記事が扱うのは、その人たちがそばにいない場面です。避難所の受付に立っている人は、お子さんのことを何も知りません。停電していれば、スマートフォンで共有URLを開くこともできません。

そう書くと不安になるかもしれませんが、備えることは多くありません。この記事でお伝えしたいのは、紙1枚を作っておくということだけです。それも、ゼロから考える必要はなく、国が公開しているひな型があります。

あわせて、名前は聞いたことがあるけれど中身がわからない、という2つのしくみ——福祉避難所避難行動要支援者名簿・個別避難計画——についても、一次資料で正確なところを整理します。どちらも「希望すれば使える」しくみではないので、そこも含めて書きます。

なお本記事は2026年9月時点で公開されている情報にもとづいています。避難所の指定状況、福祉避難所の受入対象、名簿の要件、相談窓口の名称には自治体差があるため、詳細はお住まいの市区町村でご確認ください。

備えの中心は、紙1枚です

最初に、この記事の結論を書きます。お子さんの特性を災害・緊急時に備えて用意するというのは、実質的に「紙1枚を作って、持ち出せる場所に置く」ことです。

理由は単純で、災害時にはスマートフォンもWebも見られない前提で考える必要があるからです。これは筆者の意見ではなく、公的な文書の側がそう組み立てています。

内閣府(防災担当)の「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(令和6年12月改定)は、要配慮者からの情報提供について、こう書いています。

要配慮者が周囲の避難者に対して支援して欲しいこと、知っておいて欲しいことについて、カード等を活用することにより、要配慮者自ら自分の状態に関する情報を発信できるように配慮するなど、要配慮者自身の意思を尊重すること。

同じ指針は、避難所の運営側に向けても、こう述べています。

分かりやすくまとめた紙媒体などを活用し、発達障害を含む障害特性に対する要配慮者の配慮事項や支援方法等を避難所に滞在する避難者へ周知することが適切であること。

「カード等」「紙媒体」。どちらも紙です。伝える側も、受け取って周囲に周知する側も、紙を前提に想定されています。だから、平常時にどれだけ丁寧な資料を作っていても、災害時に使える形は「持ち出せる紙」だということになります。

国が「もしもシート」というひな型を出しています

では何を書くか。ここも自分で考える必要はありません。国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターが、2026年7月に当事者向けのパンフレット「もしものときのために、そなえておきたいこと」を公開しており、その中に「もしもの時のサポートシート(もしもシート)」という書式が付いています。

このパンフレットは、小学校5年生くらいから大人までの本人と、その家族・支援者に向けて作られたものです。シートを作る理由は、こう説明されています。

災害のときは、あわてて、自分のことをうまく説明できないことがあります。

その場で説明しようとしなくていい——というのが、この1文の意味です。パンフレットが挙げている「もしもシートに書いておくこと」は、次の6項目です。

  • 名前、生年月日
  • 連絡してほしい人の名前と電話番号
  • いつも飲んでいる薬の名前と量、飲む回数、飲むタイミング
  • アレルギーについて
  • 食べられるもの、食べられないもの
  • こまったときにしてほしいこと

注目したいのは、6項目のうち4つが、命と体に直接関わることだという点です。診断名も、これまでの経過も、検査の結果も入っていません。災害時に必要とされる情報は、平常時に先生へ伝える情報とは並びが違うということです。

最後の「こまったときにしてほしいこと」について、パンフレット自身が挙げている書き方の例は、次のようなものです。

  • 「大きな声で話さないでください」
  • 「紙に書いて教えてください」
  • 「1つずつ話してください」

1行で、そのまま行動に移せる書き方です。「特性」を説明するのではなく、「してほしいこと」を書く。これが災害時の1枚のコツで、初めて会った人がそのとおりに動けます。

1枚の持ち方・置き場所

パンフレットは、作ったシートの扱い方まで具体的に書いています。

水にぬれないように、ラミネート加工をするか、チャックつきのビニール袋に入れましょう。いつも持ち歩きましょう。

あわせて、スマートフォンで写真を撮っておくこと、書いた内容が変わっていないか1年に1回見直すこともすすめられています。紙が主で、写真は控えという順番です。逆にしないでおくのが、この記事の趣旨にも合います。

置き場所についても、持ち出し袋の項でこう書かれています。

持ち出し袋は、玄関など、すぐに持っていける場所に置いておきましょう。

そして、この1枚はひとりで作るものではないとも書かれています。

もしもシートは、あなたのことをよく知っている人といっしょに作りましょう。

家族や、ふだん関わっている支援機関の人と一緒に、という趣旨です。お子さんが小さいうちは保護者の方が書くことになりますが、年齢が上がってきたら本人と一緒に作るという前提で書かれた書式である、と読めます。

1枚に何から書く?——優先順位

書式があっても、いざ書こうとすると「どこまで書くか」で迷います。基準はひとつです。お子さんのことを何も知らない人が、その場で安全に対応できるか。この順に書けば、途中で力尽きても上から順に役立ちます。

順番書くこと書き方の例(架空・一般化)
1. 命と安全に関わることアレルギー、持病、発作、服薬の有無、かかりつけ医療機関「食物アレルギーがあります(詳細は同封のコピーをご覧ください)」「毎日飲んでいる薬があります。お薬手帳のコピーを同封しています」「かかりつけ:○○医院(電話 000-000-0000)」
2. 落ち着く方法と、SOSのサイン限界が近いときの様子と、そのときにしてほしいこと「耳をふさいでうずくまるのは、つらいときのサインです」「人の少ない場所で5分ほど休むと落ち着きます」
3. 苦手な刺激音、光、におい、人の多さ、触られること「大きな音が苦手です。耳せんを持っています」「急に肩や腕をつかまれると驚きます。先に声をかけてください」
4. 呼ばれたい名前と、伝え方呼び名、指示の出し方、返事のしかた「『○○くん』と呼んでください」「短く1つずつ伝えてください」「うなずいても、伝わっていないことがあります」
5. 緊急連絡先保護者ともう1人、できれば遠方の親族も「母 000-0000-0000 / 父 000-0000-0000 / 祖母(県外)000-0000-0000」

1と2が書けていれば、1枚として十分に機能します。3から5は余裕があるときに足せばよく、白紙のままでも構いません。

薬については、1枚には「毎日飲んでいる薬がある」という事実と、お薬手帳のコピーの在りかを書くまでに留めるのが扱いやすいです。持ち出す量や保管の方法、災害時の飲み方については、かかりつけの医療機関や薬局にご相談ください。この記事で立ち入れる話ではありません。

なお、診断名は必須ではありません。「もしもシート」の項目にも入っていません。書くかどうかの考え方はサポートブックを、誰にどこまで共有する?で扱っています。診断名を書かないことは、隠すことではありません。

言葉が出ないときのための、もう1枚

同じパンフレットには、「じぶんの思いをつたえるシート」という付属資料もあります。使い方は、こう説明されています。

下の絵のなかから自分の気持ちに近いものを指さしてください。

指さすだけで伝わる紙です。話せない場面や、話す余裕がない場面のために用意されています。

同じ考え方の資料は、自治体にもあります。神奈川県は「コミュニケーションボード(救急用・医療機関用・災害用)」を公開しており、案内にはこう書かれています。

聴覚障がい者などが病気やけがをしたとき、災害時に避難所等で意思疎通を図るときなどにうまく状況を伝えられないことがあります。

災害用のボードはPDFで公開されていて、印刷して使う形です。お住まいの自治体にも同種の資料があるかもしれないので、「災害用コミュニケーションボード」「ヘルプカード」あたりで探してみると見つかることがあります。

避難所は、どんな場所になりますか?

1枚に何を書くかは、避難所という環境で何が起きやすいかから逆算すると決めやすくなります。ここも、公的な資料が言葉にしてくれています。

先のパンフレットの「避難所ってどんなところ?」の項には、「避難所では、こんなことがあるかもしれません」として、次の7つが挙げられています。

  • 周りの音がうるさいと感じる
  • 電気がまぶしいと感じる
  • においが気になる
  • 知らない人がたくさんいる
  • いつもとちがうルールやスケジュールがある
  • 避難所でのアナウンスや説明がわかりにくい
  • 避難所で出された食べ物が食べられない

音、光、におい、人の多さ、ルールの変化、説明のわかりにくさ、食事。先ほどの1枚に書く項目が、ほぼそのまま並んでいることがわかります。逆に言えば、この7つに対応する1行があれば、1枚としてはかなり実用的です。

食事については、国の事務連絡が事情まで説明しています。厚生労働省と内閣府が令和7年10月に出した「災害時の避難所等におけるアレルギー疾患を有する方への対応について」には、こう書かれています。

特に避難所では、多くの避難者に対して、限られた種類の食品を一律に提供せざるをえないなど、通常時に比べ著しく制限された環境となります。

誰かが配慮を怠っているという話ではなく、体制としてそうなりやすいということです。だからこそ国は、平常時からアレルギー対応食品や情報資材を各避難所に常備しておくことや、相談窓口の設置を求めています。そして保護者の側でできるのは、1枚の上のほうに、食べられるもの・食べられないものを書いておくことです。

伝える側だけが頑張る想定にもなっていません。内閣府の「避難所運営等避難生活支援のためのガイドライン(チェックリスト)」(令和6年12月改定)は、配慮が必要な方への対応について、こう書いています。

どのような困難に直面しているかは、本人や家族などから聞き取るなど当事者の方と話し合う機会を設けましょう。

聞き取る機会を設けるのは、避難所の側の役割として書かれています。だから、1枚を渡すのは押しつけではありません。聞かれる前提のことに、先に答えているだけです。

伝え方についても、先の取組指針が具体的な例を挙げています。障がいのある人への情報伝達の工夫として、「知的障害児者、精神障害児者、発達障害児者、認知症者に対しては分かりやすい短い言葉、文字、絵や写真の提示等」という方法が示されています。「短く、文字で、絵で」は、国の資料が推奨している伝え方だということです。1枚に「短く1つずつ伝えてください」と書くのは、この方向と一致しています。

福祉避難所は、希望すれば使えますか?

いちばん誤解が生まれやすいところなので、正確に書きます。福祉避難所は、希望すれば入れるしくみではありません。

福祉避難所は、市町村長が指定して公示する避難所です。令和3年5月の災害対策基本法施行規則の改正で、指定避難所を「指定一般避難所」と「指定福祉避難所」に分けて公示することになりました。さらに指定福祉避難所については、受け入れる被災者等をあらかじめ特定する場合には、その旨も公示するという定めになっています。

内閣府(防災担当)の「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(平成28年4月策定・令和3年5月改定)は、この改正のねらいをこう説明しています。

令和3年施行規則改正により、指定福祉避難所を指定したときに、あらかじめ受入対象者を特定し本人とその家族のみが避難する施設であることを公示する制度が創設されており、これを活用して、指定福祉避難所の指定を一層進めることが重要である。

そして公示の実務について、こう書かれています。

指定福祉避難所の受入対象者は、特定された要配慮者とその家族のみが避難する施設であることを公示すること。

つまり「誰が使える施設か」が、あらかじめ決まって公示されているのが指定福祉避難所です。受入対象は、その施設が日ごろサービスを提供している人や平素から利用している人などをもとに特定されるとされており、たとえば高齢者介護施設なら高齢者、障害者福祉施設なら障害者、特別支援学校なら障害児とその家族、といった例がガイドラインに挙げられています。

お子さんが対象になりうるかどうか

「福祉避難所は高齢者のための場所ではないか」と思われることがありますが、ガイドラインは子どもも対象に含めることを明記しています。

なお、本ガイドライン上、「障害者」など、「者」と記載する受入対象者について、18歳未満の児童も含めるものとして記載しているため、障害児や医療的ケア児等も「その他の特に配慮を要する者」に含まれる点に留意されたい。

障害児も対象になりうる、と国のガイドラインに書かれています。ただし、これは「対象になります」という意味ではありません。実際に誰を受入対象として特定するかは、施設ごと・市町村ごとに決まります。

制度が動く前提としても、発達障がいは想定に入っています。同じガイドラインは、直接避難のねらいを説明する箇所でこう書いています。

障害者等については、例えば知的障害者や精神障害者(発達障害者を含む。)の中には、障害特性により急激な環境の変化に対応することが難しい場合があるなど、一般の避難所で過ごすことに困難を伴うことが要因となり、一般避難所へ避難する行動を起こすことが難しい場合や避難行動にためらいが生じる場合があるとの指摘がある。

避難をためらってしまうことがある——という指摘が、制度改正の理由として文書に書かれているということです。

「直接避難」は、事前に決まっている場合の話です

よく話題になる「福祉避難所への直接避難」も、正確に書きます。ガイドラインの記述はこうです。

個別避難計画により、指定福祉避難所へ避難することになっている場合は、最寄りの一般の避難所等ではなく、指定福祉避難所へ直接に避難することとなる。

条件つきです。「個別避難計画により、そう決まっている場合は」という前置きがあります。受入対象者の調整は、地区防災計画や個別避難計画の作成プロセスを通じて平常時に行うものとされており、当日申し出て決まるものではありません。

なお、希望する全員が直接避難できない場合には、まず一般の避難所に要配慮者スペースを設けて一時的に避難し、その後に福祉避難所へ移るという方法も、個別避難計画等の作成時に検討することとされています。一般の避難所の中に配慮のためのスペースを用意するという道も、制度の中に置かれています。

数はどれくらいあるのか

内閣府が公表している「指定避難所等の指定状況等の調査結果」(令和7年10月1日時点)では、全国の避難所は108,405か所。うち福祉避難所は26,784か所で、その内訳は指定福祉避難所が10,153か所、協定・届出等により確保しているものが16,631か所です。

あわせて、指定一般避難所72,978か所のうち23,862か所は、福祉的スペースを設けていると報告されています。3か所に1か所ほどです。近所の一般の避難所にも、配慮のためのスペースがある可能性はあるということになります。

特別支援学校について、国が指定をすすめています

お子さんが特別支援学校に通っている場合は、確認する価値がひとつ増えます。内閣府は令和6年11月、都道府県の防災担当部局に対して「特別支援学校を障害のある子供のための福祉避難所に指定する取組の推進について(依頼)」という事務連絡を出しています。理由はこうです。

中でも特別支援学校への避難は、在校生やその家族等にとって慣れ親しんでいる場所であり、安心感を持てることが想定されます。

そのうえで、特別支援学校を在校生等のための福祉避難所として指定できるよう相談し、指定促進を図るよう依頼しています。国が後押ししている取組なので、まだ指定されていない地域もあります。だからこそ、通っている学校が指定されているかどうかは、聞いてみる価値があります。

結論:平常時に、窓口で3つ聞く

以上をまとめると、福祉避難所についてできることは、災害時ではなく平常時に確認しておくことです。市区町村の防災担当課や障がい福祉の担当課で、次の3つを聞けば足ります。

  • 指定福祉避難所はどこにあり、受入対象者はどう公示されているか(お子さんが含まれる施設があるか)
  • そこへ直接避難できるのか、それとも一般の避難所を経由するのか
  • 一般の避難所に要配慮者スペースの用意はあるか

答えは自治体ごとに違います。「わからないから聞く」で構いません。制度の側も、要配慮者とその家族への周知徹底を市町村の役割として位置づけています。

避難行動要支援者名簿と個別避難計画は、うちの子も対象になりますか?

もうひとつ、名前を聞くことの多いしくみです。こちらも正確に書きます。

災害対策基本法は、市町村長に避難行動要支援者名簿を作成しておくことを義務づけています。対象は、市町村に居住する要配慮者のうち、災害が発生し、または発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難で、円滑かつ迅速な避難の確保を図るためとくに支援を要する人です。名簿には氏名・生年月日・性別・住所・連絡先・避難支援等を必要とする事由などを記載します。

個別避難計画は、令和3年の災害対策基本法の改正(令和3年5月10日公布、5月20日施行)で新たに設けられたしくみで、名簿に載っている一人ひとりについて、市町村長が作成に努めなければならないとされています。義務ではなく努力義務で、本人の同意が得られない場合は作らない、という構造です。計画には、避難を支援する人の連絡先、避難場所、避難経路などを記載します。

対象になるかは、市区町村が決めます

ここが肝心なところです。「発達障がいがあれば名簿の対象になる」というルールはありません。内閣府の「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」(令和3年5月改定、令和7年6月更新)は、市町村がすることとして、こう書いています。

高齢者や障害者等(※)のうち、災害時に自ら避難することが困難であり、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るために特に支援を要する者の範囲について、要件を設定すること。

要件を設定するのは市町村です。指針に載っている自治体例では、要介護認定の区分、身体障害者手帳の等級、療育手帳の判定、精神障害者保健福祉手帳の等級などを組み合わせた要件が使われています。だから、対象になるかどうかは自治体によって違います。

ただし、同じ指針には保護者の方にとって意味のある留意事項がいくつも書かれています。ひとつは、同居家族がいることを理由に外さないでほしいという趣旨のものです。

保護者と同居する障害児であっても、「保護者と同居していること」等の要件のみで避難行動要支援者名簿への掲載がされないことがないよう留意すること。

もうひとつは、要件から漏れた場合の道です。指針は、要件だけでは把握できない場合があることを踏まえて、要件以外のしくみも用意するよう求めており、その例として次のようなものを挙げています。

形式要件から漏れた者が自らの命を主体的に守るため、自ら避難行動要支援者名簿への掲載を求めることができる仕組み

いわゆる手上げのしくみです。これは「例」として示されているものなので、実際に用意されているかは自治体ごとに異なります。それでも、形式要件に当てはまらないから対象外、と自分で結論を出す必要はないということはわかります。窓口で聞いてみる根拠になります。

国立障害者リハビリテーションセンターのパンフレットも、この点は窓口に投げる書き方をしています。避難行動要支援者について「くわしくは、市や町の窓口に聞いてみてください。」と締めています。制度の細部は自治体ごとに違う、という前提が国の資料の側にもあるということです。

特性を書けば、計画に反映される道はあります

個別避難計画を作る場面では、ふだんまとめている内容がそのまま役立ちます。指針は、市町村が情報を得る方法として、「避難支援等を実施する上で配慮すべき心身に関する事項」などを、本人や家族、そして本人と関わりのある介護支援専門員・相談支援専門員・かかりつけ医・民生委員などから把握することを挙げています。把握の場としては、本人宅での聞き取り、地域の調整会議、WEB会議などが示されています。

配慮すべきことを、本人と家族から把握するという設計です。指針が示す個別避難計画の様式例にも、避難時に配慮しなくてはならない事項のチェック欄と、「特記事項」「避難支援時の留意事項」という自由記述の欄が置かれています。ふだん書いている「困りやすい場面と、そのときに有効だった対応」は、そのまま持ち込める内容です。

名簿の情報が外に出るときは、同意が入ります

「名簿に載ると、情報が近所に回るのでは」という心配もあると思います。ここは法律に書かれています。

平常時、つまり災害の発生に備えて、市町村長が消防機関・警察・民生委員・社会福祉協議会・自主防災組織などの避難支援等関係者に名簿情報を提供する場合は、本人の同意が得られないときは提供しない(市町村の条例に特別の定めがある場合を除く)という構造になっています。個別避難計画情報についても同じ立てつけで、こちらは本人と避難を支援する人の同意が要ります。

いっぽう、実際に災害が発生し、または発生するおそれがある場合で、生命または身体を災害から保護するためにとくに必要があると認められるときは、同意を得ることを要しないと定められています。情報を受け取った人には秘密保持義務がかかります。

平常時は同意が入口にあり、緊急時は同意より安全が優先される。この2段構えを知っておくと、「載せるかどうか」を考えやすくなります。

福祉避難所のガイドラインも、共有の範囲を確かめる手順を書いています。

避難支援等関係者への情報共有にあたっては、指定福祉避難所の受入対象となる本人又は家族等の理解を得た上で、どの程度の情報を提供して差し支えないかを確認して、情報を整理し共有しておく。

「どの程度の情報を提供して差し支えないか」を確認する——防災の文書にも、平常時の共有と同じ考え方が入っています。どこまで渡すかの決め方はサポートブックを、誰にどこまで共有する?で詳しく扱っているので、あわせて読んでいただけると考えやすいと思います。

誰に、いつ伝えますか?

備えを、時期で分けて整理します。平常時にやっておけることと、その場で伝えることは別です。

平常時にやっておけること

  • 紙1枚を作って、持ち出し袋に入れる。玄関など、すぐ持っていける場所に置きます。ここまでで、備えの大半は終わりです
  • 市区町村の窓口で聞く。指定福祉避難所と受入対象、直接避難の可否、要配慮者スペースの有無、名簿と個別避難計画の要件。防災担当課と障がい福祉の担当課の両方に関わる話なので、どちらかで聞けば案内してもらえます
  • 学校・園・事業所と、災害時の話をしておく。在園・在校中に災害が起きたときの引き渡しの手順は、園・学校の側にあります。「うちの子はこういうときこうなります」を1枚渡しておくと、その場の判断が変わります。伝え方は担任の先生への伝え方保育園・幼稚園への伝え方で扱っています
  • 近所の人と顔見知りになっておく。先のパンフレットも、ふだんから近所の人にあいさつをしたり、地域の行事や防災訓練・避難訓練に参加しておくことをすすめています。備えのうち、いちばん手間がかからないのはこれです

その場で伝えること

  • 受付で、1枚を渡す。説明しようとしなくて構いません。「これを見ていただけますか」で足ります
  • いま困っていることを、1つだけ言う。「音がつらいので、静かな場所はありますか」のように、ひとつに絞ると通りやすくなります。ガイドラインの側にも、聞き取りの機会を設ける想定が書かれています
  • 相談窓口を探す。取組指針は、要配慮者や在宅の人も含め、さまざまな避難者の意見を吸い上げるための相談窓口を設置することを求めています。避難所で対応できないことは市町村へ、市町村でも対応できないことは都道府県へと伝えていくしくみを作るよう書かれています。言っても仕方がない、ということはありません

なお、避難所ですごすことがどうしても難しい場合について、パンフレットは在宅避難と車中泊にも1章ずつ割いています。避難所が唯一の選択肢ではないという前提で書かれた資料だということです。在宅避難や車中泊を選ぶ場合の注意点も具体的に書かれているので、原文をあたってみてください。

備えも、更新が要ります

1枚を作ったあとに必要なのは、ときどき見直すことだけです。

変わりやすいのは、いつも決まっています。服薬、体重、緊急連絡先、かかりつけ、通っている学校や事業所、そして落ち着く方法。とくに落ち着く方法は、年齢が上がると中身が変わります。去年効いた方法が、今年も効くとは限りません。

国立障害者リハビリテーションセンターのパンフレットも、書いた内容が変わっていないか1年に1回見直すことをすすめています。頻度は年1回で十分だということです。

タイミングは、防災の日でも、進級のときでも構いません。ふだんの資料を見直すついでに、1枚も差し替えるのがいちばん続きます。見直す項目の切り分け方はサポートブックは進級・進学のたびにどう更新する?で詳しく扱っています。変わりやすい情報と変わりにくい情報を分けておくと、更新は数分で終わります。

じつは、自治体のサポートファイルの側にも、災害時の使用が想定されているものがあります。山形県の「やまがたサポートファイル スタンダード・セルフ版」は、ファイルを活用するメリットとしてこう書いています。

一時保育や災害時の避難所等において、普段の状況を知る人が周囲にいないときにも、必要な配慮について伝えやすくなります。

「現在の様子」を記録するシートの記載マニュアルにも、「一時的に預かってくれる人や、災害時の避難所を利用する時にも活用することができます」と書かれています。しかもこのシートは年に1回程度、新たに記入し直す想定です。ふだんの記録と、災害時の備えは、別物ではありません。

「わたしのトリセツ」でも、項目ごとに公開・非公開を切り替えて共有用のページを作れるので、平常時にまとめた内容を印刷して持ち出す形にしておくことができます。ただし停電や通信の断絶では、Webサービスも共有URLも開けません。持ち出すのは紙という前提は、どんな作り方をしていても変わりません。

完璧に備えなくて、大丈夫です

最後に、いちばんお伝えしたいことを書きます。

備えは、1枚から始められます。アレルギーと服薬と緊急連絡先だけ書いた紙を、袋に入れて玄関に置く。それだけでも、何も持っていない状態とはまったく違います。

自治体のサポートファイルの案内も、「全ての項目を記入する必要はありません。書けるところから書いていきましょう。」という立場です。埋まっていない前提で設計されている書類なのですから、災害時の1枚も、埋まっていなくて構いません。

福祉避難所も名簿も、いま結論を出さなくていい話です。窓口で聞いておく、それだけを覚えておけば十分です。答えは自治体ごとに違うので、調べても自分では出せません。

そして、備えていなかったことを、自分の責任と考えないでください。制度の側も「平時の取組みなくして災害時の緊急対応を行うことは不可能である」という認識に立って、市町村を中心に平常時から進めるものとして組み立てられています。保護者の方ひとりで背負う設計にはなっていません。

書けるところから、1枚。あとから足せます。

参考にした情報

(各リンクの最終確認日: 2026年9月8日。法令・指針・ガイドラインは改定されることがあります。また、指定福祉避難所の指定状況と受入対象者、直接避難の可否、要配慮者スペースの有無、避難行動要支援者名簿の要件や手上げのしくみ、個別避難計画の様式、コミュニケーションボードやヘルプカードの配布状況には自治体差があるため、詳細はお住まいの市区町村でご確認ください。服薬・持病・アレルギーへの対応や、災害時の薬の扱いについては、かかりつけの医療機関・薬局にご相談ください。個別の事情についての相談は、市区町村の防災担当課・障がい福祉担当課や、発達障害者支援センターなどの相談窓口へお寄せください)

よくある質問

避難所で、子どもの特性はどう説明すればいいですか?

その場で説明しようとすると、多くの場合うまく話せません。先に紙1枚を用意しておき、受付や運営スタッフに渡すのがいちばん確実です。内閣府の取組指針も、要配慮者が支援してほしいこと・知っておいてほしいことをカード等を活用して自分から発信できるよう配慮することを求めています。避難所運営のガイドラインの側にも、どのような困難に直面しているかを本人や家族から聞き取る想定が書かれています。

停電や通信が止まってスマートフォンが見られないときは、どうすればいいですか?

紙で持っておくのが前提です。国立障害者リハビリテーションセンターのパンフレットは、シートを水にぬれないようラミネート加工するかチャックつきのビニール袋に入れて持ち歩き、あわせてスマートフォンで写真も撮っておくことをすすめています。紙が主、写真が控えという順序です。

福祉避難所は、希望すれば使えますか?

希望すれば入れるしくみではありません。福祉避難所を指定して公示するのは市区町村で、令和3年5月の災害対策基本法施行規則の改正で、受け入れる人をあらかじめ特定してその旨を公示できるようになりました。指定されているか、お子さんが受入対象に含まれるか、直接避難できるかは自治体ごとに異なるため、平常時に防災担当や障がい福祉の窓口で確認してください。

発達障がいのある子どもは、避難行動要支援者名簿の対象になりますか?

一律には決まっていません。名簿の作成は市町村長の義務ですが、誰を対象にするかは市町村が要件を設定するしくみで、要介護状態区分や障害支援区分などを用いた要件は自治体ごとに違います。内閣府の取組指針は、要件から漏れた人が自ら名簿への掲載を求められるしくみを設けることや、保護者と同居しているという理由だけで掲載されないことがないよう留意することも示しています。対象になるかは、お住まいの市区町村に確認してください。

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