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保育園・幼稚園に、お子さんの特性をどう伝える?|加配の相談と連絡帳の書き方

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保育室の低い木のテーブルをはさんで、保護者とエプロン姿の保育士が向かい合って話している様子。テーブルには開いた冊子が置かれ、保育士はペンを持っている。奥には絵本棚とぬいぐるみの棚が見える

入園の説明会が近づいてくる。担任の先生が代わる。連絡帳を開いて、書きかけたまま 鉛筆が止まる。「どこまで書いていいんだろう」「重たく受け取られないだろうか」—— 就学前のこの時期、伝え方に迷う場面は何度もやってきます。

この記事では、発達障がいのあるお子さんの特性を保育園・幼稚園に伝えるときに、どこに相談し、何を、どのチャネルで伝えるかを整理しました。 あわせて、多くの方が最初に気にされる「加配」について、 いちばん誤解されやすいところを先にお伝えします。

なお本記事は2026年9月時点で公開されている情報にもとづいています。 就学前の仕組みは自治体差・園差がとても大きい分野です。 具体的な手続きは、必ずお住まいの市区町村・通っている(通う予定の)園で ご確認ください。

先にお伝えします。「加配」は全国共通の制度ではありません

ここを誤解したまま動くと、あとで話がかみ合わなくなります。逆に、ここさえ 押さえておけば、最初の一歩をまちがえません。

こども家庭庁の資料で使われている呼び名は「障害児保育」です。 「加配」は、職員を追加で配置することを指す現場の言葉であって、 国が定めた制度の名前ではありません。

そして国がしているのは、財源の措置です。こども家庭庁の 「多様なニーズに対応した保育の充実」(令和7年10月)は、障害児保育の経緯を こう説明しています。

昭和49年度より予算補助事業として、障害児の保育に対応する職員を加配

平成15年度より当該事業を一般財源化し、地方交付税により措置

平成19年度には対象が「軽度障害児」まで広げられ、平成30年度には400億円程度から880億円程度に拡充されたうえで、 算定方法も受入障害児数によるものに変わっています。

つまり、国は市区町村にお金の裏づけを回している立場です。認定の基準も、申請の窓口も、必要な書類も、区分の名前も、 すべて市区町村が自分のところの要綱や要領で決めています。「加配制度」という全国共通の申請窓口があるわけではありません。

だから、相談先が自治体によって違います

実際に、公開されている自治体の資料を並べてみると、申請する人からして違います。

自治体(公開資料より)申請する人
名古屋市「障害児認定の申請は、利用予定又は利用中の施設・事業所が 名古屋市に対して行います」——判定は市の障害児保育指導委員会で行われます
京都市障害程度区分の認定要領で「申請者とは、認可保育施設の長とする」 と定められています。市長が書類審査のうえ判定会議を開き、区分を認定します
南城市「加配保育を希望する場合は、入所申込書と併せて加配保育利用の申請が 必要となります」——保護者が入所申込と一緒に申請する形です

園が市に申請する自治体もあれば、保護者が入所申込と一緒に申請する自治体もある。 これが実情です。ですから、この記事に限らずインターネット上の説明を読んで 「うちも同じはず」と考えるのは、あまり当てになりません。

いちばん確実な第一歩は、園または市区町村の保育担当窓口で 「うちの市ではどういう手続きになりますか」と尋ねることです。 申し込みではなく、確認です。窓口の側も、地域ごとにやり方が違うことは分かって いますから、聞かれて困る質問ではありません。

「加配がつく=1対1でみてもらえる」ではありません

期待の持ち方についても、正直に書いておきます。名古屋市は、市の資料で こう明記しています。

必ずしも1対1で職員が配置されるものではありませんので、ご理解ください。

同じ資料は、公立保育所ではパート職員等を配置し、民間保育所等では受入れのための 補助を行う、という形も説明しています。つまりお金の使われ方すら一様ではありません。 「専属の先生がひとり付く」というイメージで話を進めると、園の側の説明と 食い違ってしまうことがあります。

これは園が出し惜しみをしているという話ではなく、仕組みがそうなっているという話です。だからこそ、 「うちの園では実際にどういう体制になりますか」と聞いておくと、 お互いに気持ちよく進みます。

私立幼稚園は、また別の系統です

「保育園・幼稚園」とひとまとめに語られがちですが、支援のお金の流れ方が違います

保育所の障害児保育は、先ほどのとおり地方交付税による財源措置です。 一方、私立幼稚園への特別支援教育の支援は、文部科学省の 「私立高等学校等経常費助成費補助金(幼稚園等特別支援教育経費 ほか)」交付要綱に あるとおり、都道府県が行う補助事業に対して国が補助する形をとって います。財源も窓口も別の系統だということです。

認定こども園はさらに、その園がどの類型かによって関わる仕組みが変わります。ご自分のお子さんが通う園がどのルートに乗っているのかは、 園または自治体に直接確認するのがいちばん早いです。

確認しておくとよいこと(自治体・園によって違う項目)

次の項目は、すべて自治体差・園差があります。 調べても全国共通の答えは出てきません。窓口で聞くのが確実です。

  • 申請するのは保護者か、園か
  • 申請の時期(入所申込と同時か、入園後か、毎年度更新か)
  • 認定の名称と区分の呼び方
  • 必要な書類と、診断書が要るかどうか
  • 診断がない場合に対象になるかどうか
  • 判定がどこで行われるか、訪問調査があるかどうか
  • 配置された職員が、誰に、どのくらいの時間つくのか
  • 私立幼稚園・認定こども園ではどのルートになるか

伝えることは、保護者だけの仕事ではありません

「うまく伝えられなかったら、配慮してもらえないのでは」——そう感じる方は 少なくありません。けれども制度の設計は、その逆になっています。

こども家庭庁が所管する保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示。 平成30年度から適用され、令和5年4月のこども家庭庁発足に伴い所管が移りました)は、 障害のある子どもの保育についてこう定めています。

障害のある子どもの保育については、一人一人の子どもの発達過程や障害の状態を 把握し、適切な環境の下で、障害のある子どもが他の子どもとの生活を通して 共に成長できるよう、指導計画の中に位置付けること。また、子どもの状況に応じた 保育を実施する観点から、家庭や関係機関と連携した支援のための計画を個別に 作成するなど適切な対応を図ること。

把握するのは園の側だと書かれています。そして 保育所保育指針解説は、その把握の仕方についてこう述べています。

障害や発達上の課題のある子どもの理解と援助は、子どもの保護者や家庭との連携が 何よりも大切である。その際、子どもの困難な状況だけでなく、得意なこと等も含めて、 保育所と家庭での生活の状況を伝え合うことに留意する。

「困難な状況だけでなく、得意なこと等も含めて」—— この一文は、このあとの「何を伝えるか」の骨格になります。困りごとの報告だけが 求められているのではありません。

同じ指針は、保護者への支援についてもこう定めています。

子どもに障害や発達上の課題が見られる場合には、市町村や関係機関と連携及び協力を 図りつつ、保護者に対する個別の支援を行うよう努めること。

さらに児童福祉施設の設備及び運営に関する基準は、保育所の長について「常に入所している乳幼児の保護者と密接な連絡をとり、保育の内容等につき、 その保護者の理解及び協力を得るよう努めなければならない」と定めています(保育所保育指針解説が引用しているとおりです)。

発達障害者支援法にも、就学前についての条文があります。 市町村は保育所における保育を行う場合などに「発達障害児の健全な発達が他の児童と共に生活することを通じて図られるよう 適切な配慮をするものとする」とされています。

まとめると、保護者から伝えることは、お願いごとではなく、 制度が前提にしている情報のやりとりです。 遠慮する側にいるわけではありません。

それでも園が余裕なさそうに見えるとき

現場が忙しそうで切り出しにくい、という感覚には、じつは背景があります。 こども家庭庁成育局保育政策課の事務連絡「保育所等における障害のあるこどもの 受入れについて」(令和6年12月5日)は、冒頭でこう書いています。

保育所等における障害のあるこどもの受入れ数は約9万人であり、10年前と比較すると 約2倍となっております。

10年で約2倍。受け入れが広がったのは良いことですが、 現場の負荷が構造的に増えていることも事実です。これは目の前の先生の姿勢の 問題ではありません。忙しそうに見えるとき、それは体制の話だと受け取っておくと、話が余計にこじれずにすみます。

同時に、この事務連絡は自治体・園の側に対して、「単に障害を理由として一律に保育時間や受入年齢の取扱いに差異を設ける といった対応は適当ではない」と明記しています。不当な差別的取扱いの例 としては「正当な理由なく、障害を理由として、保育の提供を拒否する又は提供に 当たって場所・時間帯などを制限すること」などが挙げられています。

そのうえで、正当な理由があると判断した場合には、障害のあるこどもや保護者に「丁寧かつ具体的にその理由を説明し、理解を得るように努めて」ほしい、とも書かれています。

ここから言えるのは、「なぜそうなるのかを説明してもらってよい」ということです。園と戦うための話ではありません。理由を聞くことは、 国が園や自治体に求めていることの側にあります。

連絡帳も送迎時の会話も、正規の連携チャネルです

「わざわざ面談の時間をもらうほどのことではないけれど、伝えておきたい」。 そういうときに使えるチャネルは、じつは公的にきちんと位置づけられています。 保育所保育指針解説には、保護者との連携の手段としてこう並んでいます。

そのための手段や機会として、連絡帳、保護者へのお便り、送迎時の対話、 保育参観や保育への参加、親子遠足や運動会などの行事、入園前の見学、個人面談、 家庭訪問、保護者会などがある。

連絡帳も、送迎時の対話も、入園前の見学も、思いつきの手段ではありません。指針解説に並んでいる、正規のチャネルです。だから 「こんなことを連絡帳に書いていいのかな」と迷ったら、書いていいほうに倒して 大丈夫です。

ただし、連絡帳が紙かアプリか、毎日書くものか、返信があるものか、 送迎時にどのくらい話せるかは園によってまったく違います。 年度のはじめに「ご連絡はどの方法がいちばんご負担が少ないですか」と一度 確認しておくと、その後がずっと楽になります。

何を伝える?——まず最初に伝えたいこと

入園時や担任交代の直後は、伝えたいことが山ほどあります。けれど、 受け取る側が最初に必要としているのは、そう多くありません。次の6つだけで、最初の1回は十分です。

  1. 呼ばれたい名前——家庭での呼び方、本人が嫌がる呼び方
  2. 命と安全に関わること——アレルギー、発作、服薬、既往。 ここは最優先で、かつ正確に
  3. 緊急連絡先の優先順位——つながりやすい順に
  4. いまいちばん困っていることを1〜2つ
  5. いまいちばん助かる配慮を1〜2つ
  6. 落ち着く方法と、SOSのサイン——本人がしんどくなる前に出る 様子と、そのときに効いていること

6つ目が入っているのが、就学前ならではのところです。ことばで 「つらい」と言えない時期ほど、先に出るサインを共有しておくことが 効いてきます。

少しずつ足していく項目

あとは、季節が進むにつれて足していけば十分です。園の生活は集団・生活習慣・遊びで回っているので、その文脈で並べると 受け取りやすくなります。

領域伝えると役に立つこと
生活リズム・睡眠起床・就寝の時間、寝つきや寝起きの様子、疲れやすい時間帯
食事食べられる形状・温度、苦手な食感やにおい、食具の使い方、食べるペース、 席の環境
排泄いまの段階、伝え方(言えるか・仕草か)、うまくいっている声かけ
着替え・身支度ひとりでできるところ・手伝いが要るところ、服の素材やタグの好み
午睡眠れるかどうか、必要なもの、眠らないときの過ごし方
感覚苦手な音・光・におい・触感、落ち着けるもの、避けたい場面
見通し・切り替え予定の伝え方(ことば/絵/写真)、切り替えにかかる時間、 うまくいっている合図
ことば・伝え方話しことばの様子、指差しや身振り、聞き取りやすい伝え方(短く・ひとつずつ 等)
友だち・集団得意な人数、遊びへの入り方、トラブルになりやすい場面、ひとりで過ごしたいとき
行事・園外初めての場所、大きな音、人が多い場面での様子。家庭で用意できること
得意・好き夢中になれること、ほめられて嬉しかったこと。ここは必ず入れる
これまでの経緯利用している療育・関わっている機関、そこで教わって家でうまくいっていること
家庭と本人の希望今年度どんなふうに過ごせたらいいと思っているか。本人の言葉があれば、そのまま
共有範囲どこまでを誰と共有してよいか。これは後述しますが、明記しておくと安心です

全部を一度に埋める必要はありません。空欄があっても、伝えたいものから書けば伝わります。

書き方の工夫

ここから先は一般的に勧められている工夫で、公的な決まりが あるわけではありません。合わないと感じたら、飛ばしてかまいません。

  • 診断名だけを渡さない。場面 → そのときの様子 → 家でうまくいっている対応の順に書くと、 読んだ先生がその日から使えます
  • 性格の評価語を避ける。「ワガママ」「神経質」「頑固」ではなく、 実際の行動と、そのとき何に困っているかで書く
  • 家庭の対応は「参考になれば」と渡す。園でどう実装するかは先生の判断に任せます。家庭と園では人数も環境も違うので、 そのままは持ち込めないことがあります
  • 箇条書きで、優先度順に。大事なものを上に置き、 書きすぎない。読み切れる量にすることも配慮のうちです
  • 全部を毎回渡さない。行事の前ならその行事に関係するページだけ、 というふうに選んで渡すほうが、結果的によく読まれます

書き方そのもの——「○○であれば△△できます」の形にする、擬態語や形容詞を行動に 言いかえる、といった原則——はサポートブックの作り方・書き方ガイドに項目別の記入例つきでまとめています。本記事では重複を避けて、そちらに譲ります。

この順番には、じつは裏づけがあります

「場面 → 様子 → 有効だった対応」という順番は、思いつきではありません。 園が就学先の小学校に送る書類を書くときの決まりが、同じ形を しています。

保育所児童保育要録について、国の通知(平成30年3月30日)は、特別な配慮を要する 子どもの記載についてこう定めています。

診断名及び障害の特性のみではなく、その子どもが育ってきた過程について、 その子どもの抱える生活上の課題、人との関わりにおける困難等に応じて行われてきた 保育における工夫及び配慮を考慮した上で記載すること。

診断名だけでは足りない。育ってきた過程と、行われてきた工夫と配慮を書く。園はそう求められています。だから保護者が伝えるときも同じ形にしておくと、 受け取る側が使いやすいのです。診断名を書くこと自体が悪いのではなく、診断名「だけ」だと、明日の保育に使えないという話です。

いつ伝える?——場面別の一覧

伝えどきは一度きりではありません。制度上の裏づけがある場面と、 慣行として行われている場面が混ざっているので、分けて整理しました。

タイミング伝えるとよいこと位置づけ
入園前の見学・相談いまの様子をざっくりと。あわせて「うちの市の手続きはどうなりますか」を確認指針解説が挙げる連携の機会のひとつ
入園時先ほどの「まず最初に伝えたいこと」6つ園ごとの様式・面談による
年度当初・進級時あらためて要点。1年でできるようになったことも一緒に園ごとの運用による
担任交代の直後「前にお伝えした内容ですが」と一言添えて、短く渡し直す園ごとの運用による
日々の連絡帳1回1件で短く。体調・睡眠・家庭の変化・うまくいったこと指針解説が挙げる連携の手段
送迎時の会話その日限りの一報。「今日は少し眠そうかもしれません」で十分指針解説が挙げる連携の手段(「送迎時の対話」)
個人面談話したいことを1枚にまとめて事前に渡すと、当日の時間を中身に使えます指針解説が挙げる連携の機会
保護者会全体の場です。個別の相談は別途、と割り切ったほうがお互い楽になります指針解説が挙げる連携の機会
行事の前その行事に固有の心配ごとと、家庭で用意できること園ごとの運用による
年長の秋以降就学に向けた相談。次の節でまとめます要録は国の通知・省令にもとづく(後述)

個人面談・保護者会・家庭訪問の有無や時期・回数は、園によって異なります。年度はじめに配られる行事予定で、通っている園の形を確かめておくのが確実です。

園の外から支える仕組み——「巡回相談」は2種類あります

「専門の人が園に来てくれる」という話は、じつはまったく別の2つの仕組みが 同じような呼ばれ方をしています。混同すると、窓口をたらい回しになります。

(a) 巡回支援専門員整備事業

市町村が地域生活支援事業として行っているもので、専門員が園に出向いて助言をします。 たとえば長与町(長崎県)の実施要綱は、目的をこう定めています。

この事業は、保育所等への巡回等支援を実施し、障害が「気になる」段階から支援を 行うための体制の整備を図り、発達障害児等の福祉の向上を図ることを目的とする。

同じ要綱では「保育所等」を「保育所、幼稚園、認定こども園、児童館、放課後児童クラブ、 子育て支援センターその他の子ども又はその保護者が集まる施設及び場」と広く定義しています。町と専門員が活動計画を作って巡回する形なので、保護者が個別に契約して利用するサービスではありません

大事なのは「気になる」段階からという言葉が、事業の目的そのものに 書かれていることです。診断がなくても使われている仕組みがある、 ということです。ここから「では診断を取りに行きましょう」という話にはなりません。 受診や検査の判断は、主治医や専門機関に相談することです。

ただし、この事業を実施しているかどうか、名称をどうしているかは 自治体によって異なります。「巡回相談」「発達相談」など呼び方もさまざまです。 園に「巡回の先生は来られますか」と聞いてみるのが早道です。

(b) 保育所等訪問支援

こちらは児童福祉法にもとづく障害児通所支援のひとつで、 (a) とはまったく別物です。こども家庭庁の「保育所等訪問支援ガイドライン」 (令和6年7月)は、こう書いています。

保育所等訪問支援が個別給付であることを踏まえ、申請者である保護者からその利用の 理由などについて丁寧に聴き取り、保護者の不安やニーズについて整理する

個別給付であり、申請するのは保護者です。 市町村の支給決定という手続きが必要になります。

同ガイドラインには、保護者にとって大事なもう一点も書かれています。

保育所等訪問支援が、保護者のいない場所と時間帯に提供されるサービスであることも 踏まえ、訪問支援の内容に加え、訪問先でのこどもの様子や、周りのこどもや訪問先 施設の職員等との関わりの状況を丁寧に伝えることが、保護者の不安を取り除くためにも 重要である。

保護者がいない時間に行われる支援だからこそ、様子を丁寧に 伝えることが事業所側に求められています。「どうでしたか」と聞くのは、 遠慮のいることではありません。

なお、事業所とのやりとりの進め方については放課後等デイサービスに、お子さんの特性をどう伝える?でも扱っています。

「個別の計画」は、作られることもある、という位置づけです

ここは期待の持ち方を間違えやすいところなので、正確に書きます。

保育所保育指針解説は、個別の指導計画についてこう述べています。

そこで、必要に応じて個別の指導計画を作成し、クラス等の指導計画と関連付けて おくことが大切である。

「必要に応じて」です。全員に作られるものではありません。

幼稚園については、幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示)が、障害のある幼児 などへの指導について「個別の教育支援計画を作成し活用することに努める」「個別の指導計画を作成し活用することに努めるものとする」としています。こちらは努力義務です。

どちらも「作成しなければならない」ではありません。ですから「作ってもらえるはず」「写しをもらえるはず」と考えず、 いまどうなっているかを園に尋ねるところから始めるのが確実です。 作られている園もあれば、クラスの指導計画の中で対応している園もあります。

ちなみに放課後等デイサービスなどの障害児通所支援では、事業所が個別支援計画を 作成し、保護者に交付することが省令上の義務になっています。就学前の園とは、根拠の強さが違うということです。 この違いを知っておくと、「なぜ園ではもらえないのだろう」と戸惑わずにすみます。

年長の1年——就学へ、2つのルートで届きます

ここは公的にきちんと定まっているところなので、はっきり書けます。 年長の1年で、お子さんの情報は2つの別ルートで小学校に届きます。

ルート1:園が書いて、園から小学校へ送るもの

保育所には保育所児童保育要録があります。国の通知は、 これを「最終年度の子どもについて作成すること」「作成に当たっては、 施設長の責任の下、担当の保育士が記載すること」とし、就学に際して抄本又は写しを就学先の小学校の校長に送付することとしています。 この通知は、地方自治法にもとづく技術的助言である旨も 明記されています。

幼稚園には幼稚園幼児指導要録があります。文部科学省の通知 (平成30年3月30日)は、学校教育法施行規則の規定により「小学校等の進学先に指導要録の抄本又は写しを送付しなければならない ことに留意すること」としています。

保育所は通知(技術的助言)にもとづき、幼稚園は省令にもとづく。根拠の強さが違うところです。どちらも「園が書いて、園から送る」という点は同じです。

「知らないうちに送られるのでは」と心配になるかもしれませんが、 保育所児童保育要録についての通知は、作成にあたって「保護者との信頼関係を基盤として、保護者の思いを踏まえつつ記載する」こと、そして送付について「入所時や懇談会等を通して、保護者に周知しておくことが望ましい」ことを求めています。個人情報保護および情報開示の在り方に留意することにも 触れられています。

つまり、あらかじめ説明されるべきものとして設計されています。 気になる場合は「要録はどんなふうに書かれるのですか」と聞いてかまいません。

ルート2:保護者が書いて、保護者が提出するもの

自治体によっては就学支援シート(名称は地域によって異なります)が 用意されていて、これは保護者が書いて提出する任意の書類です。

要録とは別のルートで、両方が小学校に届く——この構造を知っておくと、 「園に任せておけばいいのか、自分でも出すのか」という迷いが減ります。 園から届くのは園から見た1年間の姿、保護者から届くのは家庭から見た姿です。 どちらも要ります。

書き方は就学支援シートの書き方|記入例・例文と、伝わるまとめ方のコツに、項目別の記入例つきでまとめています。

なお、就学支援シートの有無・名称・様式・提出時期は自治体によって まったく異なります。用意されていない自治体もあります。 年長の春から夏ごろに、自治体の就学相談の案内を確認しておくと安心です。

入学後、担任の先生にどう伝えるかについては担任の先生に、お子さんの特性をどう伝える?で扱っています。

診断名や病歴を、どこまで共有するか

診断名や病歴は要配慮個人情報にあたります。伝えるかどうか、 どこまで伝えるかは、ご家庭が決めることです。

実務的には、次のように書き分けておくと迷いが減ります。

  • 命と安全に関わること(アレルギー、発作、服薬など)は、 関わる職員に確実に伝わっている必要があります
  • それ以外については、「この情報は担任の先生までで結構です」 「この部分は園全体で共有してくださって大丈夫です」のように、 書類の中に共有範囲を書き添えておく
  • 就学先への引き継ぎについても、気になる場合は「小学校に伝わってよい範囲」を口頭でも伝えておく

伝えないという選択も、当然あります。ただし、診断名を伝えなくても、場面と有効だった対応は伝えられます。 そしてそちらのほうが、明日の保育には役に立ちます。

手元に1冊——サポートファイルという方法

自治体が配っているサポートファイル(名称は地域によって 「サポートブック」「サポートノート」などさまざまです)は、 園・小学校・医療機関と、渡す相手が変わっても使える1冊です。

札幌市の「サポートファイルさっぽろ」の案内には、性格がよく表れています。

  • 「ファイルは、原則的には保護者の方が記録・保管します。」——園や役所に預けるものではなく、手元に置くものです
  • 使う場面として「入園、入学、進学、就労など、お子さんにかかわる人が 代わる時」が挙げられています
  • 「すべてのシートを埋める必要はありません。」「書きやすいところから始めましょう。」とも書かれています

全部埋めなくていいと自治体自身が明記している、というのは 覚えておくと気が楽になります。フェイスシートのような基本情報から書き始めて、 あとは思い出したときに足していけば十分です。

浦安市、藤沢市、横須賀市など、多くの自治体が同じような様式を公開しています。お住まいの自治体に用意があるか、名称が何かは、 障がい福祉や子育て支援の窓口で確認してください。用意がなくても、市販のノートやサポートブックの作り方・書き方ガイドの項目を参考に、自分で作ってかまいません。

完璧に伝えなくて、大丈夫です

最後に、いちばん伝えたいことを書きます。

保育所保育指針は、園の側に子どもの状態を把握すること家庭との連携を求めています。指針解説は、伝え合う内容として「困難な状況だけでなく、得意なこと等も含めて」を挙げています。 連絡帳も送迎時の対話も、そこに並んだ正規のチャネルです。 そして就学先に送る書類ですら、園は「診断名だけではなく、育ってきた過程と、 行われてきた工夫と配慮」を書くこととされています。

つまり、あなたが伝えたい形と、園が受け取りたい形は、 もともと同じ方向を向いています。

だから最初の1回は、呼ばれたい名前/安全に関わること/ いま困っていること1つ/いま助かる配慮1つ/落ち着く方法—— これだけで十分です。あとは連絡帳で、送迎のときに、面談で、少しずつ足していけます。

そして加配については、「うちの市ではどういう手続きになりますか」と園か市区町村の窓口で聞くところから。全国共通の答えがない分野なので、 調べ込むより、聞いたほうが早いのです。

参考にした情報

(各リンクの最終確認日: 2026年9月2日。制度・指針・様式は改定されることがあります。 また、加配(障害児保育)の申請主体・時期・区分・必要書類、巡回相談の実施の有無、 個別の指導計画の作成状況、就学支援シートやサポートファイルの有無や名称には 自治体差・園差があるため、詳細はお住まいの自治体・通っている園でご確認ください)

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