わたしのトリセツ

サポートブックは進級・進学のたびにどう更新する?|書き直す項目と、そのままでいい項目

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明るい木のテーブルの上で、印刷した2枚の書類を並べて見比べている保護者の手元。手前には白紙のノートとペンが開かれ、奥には観葉植物とノートパソコンが置かれている

去年、時間をかけて書いたサポートブック。開いてみたら、学年もクラスも担任の先生の名前も違っていて、「いま困っていること」の欄には、もう困っていないことが書いてある——そんな経験はないでしょうか。

毎年、同じ説明を最初からし直している気がする。担任の先生が変わるたび、また一から伝え直し。この負担は、多くの保護者の方が感じているものです。神奈川県藤沢市は、自治体が配布している「子どもサポートファイル」の説明で、その狙いをこう書いています。

このファイルを活用することで、入園や入学等で環境が変わる時期や、いくつかの関係機関と並行して関わるときに、保護者が何度も同じ説明を繰り返さないといけない負担を軽減し、情報の伝達がスムーズにできます。

つまり、手元に1冊あることの価値は「何度も説明しなくてよくなること」にあります。ところが、その1冊が古くなっていくと、価値も一緒に目減りしていきます。

この記事では、一度作った資料を、進級・進学・担任交代のたびにどう更新するかを整理しました。結論を先に言うと、全部を書き直す必要はありません。書き方そのものはサポートブックの作り方・書き方ガイドに譲り、ここでは「時間が経ったときにどうするか」だけを扱います。

なお本記事は2026年9月時点で公開されている情報にもとづいています。制度の運用や様式には自治体差・学校差・事業所差があるため、詳細はお住まいの自治体や、通っている学校・園・事業所でご確認ください。

変わりやすい情報と、変わりにくい情報

更新がおっくうになるいちばんの理由は、「全部を見直さなければいけない気がする」ことです。でも実際には、1年経ってもそのままでいい項目のほうが多いのが普通です。書いた内容を、変わる速さで3つに分けてみます。

変わる速さ項目の例更新の目安
ほとんど変わらない呼ばれたい名前、生育の経過、アレルギーや既往、感覚の特徴(音・光・肌ざわりなど)、落ち着くための方法、好きなこと・得意なこと、伝わりやすい声のかけ方基本はそのまま。数年に一度、目を通せば十分
年単位で変わる学年・クラス・担任の先生、関わっている機関の一覧、できるようになったこと、いま困っている場面、本人の希望、お願いしたい配慮年度替わりに見直す
随時変わる服薬の状況、緊急連絡先、通っている事業所と曜日、体調や生活リズム、最近うまくいった方法変わったその都度、書き足す

この分け方をしておくと、年度替わりに開いたときに見るところが決まります。まん中の段だけ直せば、たいてい間に合います。いちばん時間がかかった「ほとんど変わらない」段は、書いたときの労力がそのまま次の年も効き続ける部分です。

札幌市が配布している「サポートファイルさっぽろ」も、更新は書き足しでよいという立場で案内しています。

お子さんの様子は変わっていきます。変更があったら、追加で書き足していきましょう。

山形県の「やまがたサポートファイル」も同じで、「家庭と支援者とで情報共有しながら書き加えていく」という使い方を想定しています。更新=書き直しではなく、書き足し。これが公的資料の側の前提です。

制度の側も「見直す前提」でできています

「一度決めたことを変えるのは、気が引ける」と感じる方もいます。けれど、専門職が作る計画のほうも、定期的に見直す仕組みで動いています。

たとえば放課後等デイサービス。事業所が作る放課後等デイサービス計画については、児童福祉法にもとづく省令(指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準)で、計画を作ったあとも実施状況を把握し、少なくとも六月に一回以上見直しを行い、必要に応じて変更する、と定められています。作りっぱなしにしないことが、制度として組み込まれているわけです。事業所への伝え方は放課後等デイサービスに、お子さんの特性をどう伝える?で扱っています。

学校での配慮についても同じです。文部科学省の「文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」(令和6年1月改正)は、初等中等教育段階の合理的配慮についてこう書いています。

合理的配慮の合意形成後も,幼児,児童及び生徒一人一人の発達の程度,適応の状況等を勘案しながら柔軟に見直しができることを共通理解とすることが重要であること。

同じ指針は、計画の見直しについてもこう述べています。

個別の教育支援計画や個別の指導計画について,各学校において計画に基づき実行した結果を評価して定期的に見直すなど,PDCAサイクルを確立させていくことが重要であること。

つまり、見直すことは例外ではなく、想定されている動きです。手元の資料を更新するのも、同じ流れの中にあります。「去年こう書いたのに、今年は違うことを言っている」と気にする必要はありません。

移行期は、引き継ぐと同時に「見直す」タイミングです

進級・進学のとき、制度の側でも情報は動きます。学校教育法施行規則では、児童等が進学した場合、校長が指導要録の抄本または写しを作成して進学先の校長に送付することになっています。保育所から小学校へは、保育所児童保育要録の抄本または写しが就学先の小学校長に送付されます(「保育所保育指針の適用に際しての留意事項について」)。

文部科学省の「障害のある子供の教育支援の手引」(令和3年6月)も、個別の教育支援計画についてこう書いています。

担任や学校等が変わっても,教育上の合理的配慮を含む必要な支援の内容の提供が,切れ目なく確実に引き継がれるよう努めていくことが重要である

先の対応指針も、進学や進級等の移行時に途切れない支援を提供するため、個別の教育支援計画の引継ぎや情報交換等により、合理的配慮の引継ぎを行うことが必要である、としています。制度としての引き継ぎ経路は、たしかにあります。園・学校との関わり方は保育園・幼稚園への伝え方担任の先生への伝え方にまとめています。

ここで大事なのは、同じ手引が、移行期を「引き継ぐ場」だけでなく「評価し直す場」としても位置づけていることです。移行期の教育支援とは、

これまでの教育的ニーズや必要な教育支援の内容を改めて評価して必要な見直しを行うことにより,より良い教育支援を行うことができるようにすることである

と書かれています。つまり進級・進学は、去年のままを渡す場面ではなく、いったん見直してよい場面だということです。手元の資料を更新するのに、これ以上ふさわしいタイミングはありません。

なお、同じ手引は、必要な情報が「必ずしも就学先・進学先に丁寧に引き継がれ,十分に活用されているとは言えない側面もあり」とも率直に書いています。これは学校の姿勢の問題ではなく、学校種をまたぐ情報共有の仕組みの課題です。だからこそ、保護者の手元にも1冊あることに意味があります。就学前後の書類については就学支援シートの書き方もあわせてご覧ください。

いつ見直す?——決まった時期と、出来事のとき

見直しのタイミングは、大きく2種類に分けると迷いません。

1. 決まった時期に、ざっと

札幌市のサポートファイルの手引きには、「毎年同じ時期に見直していくことも大切です。」と書かれています。日付を決めてしまうのがいちばん楽です。年度替わりの前後、あるいは学期の変わり目。カレンダーやスマートフォンのリマインダーに「トリセツ見直し」と入れておくだけで、思い出す努力がいらなくなります。

このときに見るのは、先の表のまん中の段だけで十分です。所属、関わっている機関、できるようになったこと、いま困っていること。15分もあれば終わります。

2. 出来事があったときに、その部分だけ

自治体のサポートファイルは、使う場面をこう挙げています。札幌市は「入園、入学、進学、就労など、お子さんにかかわる人が代わる時」「受診や福祉サービスなどを新たに受ける時」「お子さんの成長に合わせ、支援を見直す時」。山形県は「進級・進学や引越しなどで支援者が変わった時」。

いずれも共通しているのは、「関わる人が変わるとき」という軸です。

  • 進級・進学・転校・引っ越し
  • 担任の先生や、支援を担当する先生が変わったとき
  • 利用する事業所が増えた・変わった・曜日が変わったとき
  • 新しく相談先や医療機関にかかりはじめたとき
  • 生活が大きく変わったとき(引っ越し、家族構成の変化、生活リズムの変化など)
  • うまくいく方法が新しく見つかったとき

最後のひとつは、忘れられがちですが実はいちばん価値があります。「これをやったら落ち着いた」が見つかった日に、1行だけ足しておく。次に誰かに渡すとき、その1行が効きます。

更新のしかた——上書きするもの、残しておくもの

更新するとき、迷うのは「前に書いたことを消すかどうか」です。目安はこうです。

上書きしてよいもの

いまの事実を書いてある欄は、そのまま新しい内容に置きかえて問題ありません。学年・クラス・担任の先生の名前、通っている事業所と曜日、緊急連絡先、いまの服薬の状況、現在の体調や生活リズム。古い情報が残っているほうが、読む人を迷わせます。

消さずに残したいもの

いっぽう、「できるようになったこと」は消さないでおくことをおすすめします。理由は2つあります。

1つは、読む側にとって経過そのものが情報になるからです。保育所児童保育要録についての国の通知は、特別な配慮を要する子どもについて書くとき、「診断名及び障害の特性のみではなく、その子どもが育ってきた過程について」、これまで行われてきた工夫や配慮を考慮したうえで記載するように求めています。いまの状態だけを書いた資料より、「どうやってそこまで来たか」がわかる資料のほうが、支援の手がかりになります。1年前にできなかったことが今できているなら、その間に効いた関わり方があったはずで、それは次の場所でも使える情報です。

もう1つは、書いている側のためです。困りごとの欄ばかり毎年更新していると、資料が「できないことリスト」になっていきます。「去年はここで困っていたが、いまはこうしている」という書き方に変えると、同じ情報が前向きな記録に変わります。

書き換えかたの例を挙げます(架空・一般化した文です)。

  • 前年:「教室から出てしまうことがあります」
    今年:「昨年度は教室から出てしまうことがありましたが、今は『◯分だけ廊下で休む』と決めておくと、自分で戻れています」
  • 前年:「予定の変更が苦手です」
    今年:「予定の変更は今も苦手ですが、朝のうちに知らせてもらえると受け入れられることが増えました」

どちらも、消して書き直すのではなく前の記述を土台にして1行足しているだけです。これが、更新でいちばん手が軽くて、いちばん伝わる方法です。書き方そのものの原則はサポートブックの作り方・書き方ガイドにまとめています。

渡し直すときのコツ

更新した資料を渡すとき、丸ごと渡し直すと、受け取る側は「どこが変わったのか」を探すことになります。ひと手間だけ足すと、ぐっと読まれやすくなります。

「前回から変わったところ」を一言添える

口頭でも、付せんでも、メッセージでもかまいません。「基本は昨年度と同じです。変わったのは、通っている事業所と、休み時間の過ごし方の2つです」。これだけで、受け取った人は変更点から読めます。

毎回、全部を渡さない

札幌市のサポートファイルの案内には、こう書かれています。

支援機関にファイルを見せる時には、ページを選んだり、強調したいところをマークするなどで、わかってもらいやすくなります。

必要なページだけを選んで渡してよい、というのが公的資料の側の案内です。学校に渡すもの、事業所に渡すもの、医療機関に渡すものは、それぞれ違っていて構いません。全部を毎回渡すより、相手に関係するところを渡したほうが読まれます。

大事な1〜2点は、口で言う

資料を渡したからといって、必ず読まれるとは限りません。渡したうえで、「今年いちばんお願いしたいのはここです」と1〜2点だけ口頭でも伝えておくと確実です。これは担任の先生への伝え方でも触れているとおりです。

紙で運用している場合の、現実的な工夫

紙のファイルで続けている方も多いと思います。自治体のサポートファイルも、 A4のファイルに綴じていく紙の運用が基本です。紙には紙のよさがあり、無理に変える必要はありません。ただ、紙ならではの困りごとがいくつかあります。

どれが最新かわからなくなる

いちばん多いのがこれです。対策はシンプルで、各ページの隅に更新した日付を書いておくこと。「2026年4月更新」とだけ。これがあると、コピーが何枚出回っても、受け取った側が新しいかどうかを判断できます。

コピーを渡した先で、版がずれる

渡したコピーは、こちらが更新しても古いままです。だからこそ、日付の記入と、「新しいものをお渡ししますね」のひと言がセットになります。渡した先と日付をメモしておくと、次に更新したとき誰に渡し直すべきかがわかります。

書き直しがおっくうになる

全ページを清書し直そうとすると続きません。差し替えるページだけ差し替えるのが基本です。札幌市の案内も、すでに他の資料がある場合はそれを綴じることでシートの記入に代えてよい、としています。

医療や療育、教育機関などから既に類似の内容が記入されている資料がある場合は、そのまま綴ることでシートの記入に代えることができます。

事業所からもらった計画の写しや、検査結果の説明の紙。これらをそのまま挟むだけで、書く量が減ります。書き写す必要はありません。

手書きの追記でいい

きれいに作り直さなくても、余白に手書きで足せば更新です。読む人にとっては、体裁より中身が新しいことのほうが役に立ちます。

共有する範囲は、そのつど決めてかまいません

更新のたびに考えておきたいのが、どこまでを誰に渡すかです。診断名や病歴、服薬の情報は、個人情報の中でもとくに慎重に扱われるべき情報にあたります。札幌市も、サポートファイルについて「ファイルの内容は大変貴重な個人情報ですので、大切に取り扱ってください。」と案内しています。

全部を書いておくことと、全部を渡すことは別です。手元には詳しく残しておき、渡すときは相手と目的に合わせて必要な範囲を選ぶ。これは前の節の「毎回、全部を渡さない」と同じ考え方です。渡す相手が増えたときこそ、範囲を決め直すよい機会になります。

なお、学校で合意した配慮の内容は、先に見たとおり個別の教育支援計画に記載され、関係する職員の間でプライバシーに配慮しつつ共有される仕組みになっています。校内で共有される範囲について気になることがあれば、伝えるときに一緒に相談して構いません。

手元の1冊を、更新して使い続ける

自治体のサポートファイルは、保護者が持ち続ける前提で作られています。札幌市は「ファイルは、原則的には保護者の方が記録・保管します。」と書き、山形県は「保護者の方、又はご本人が記録・保管するもの」と説明しています。

学校や事業所が作る計画は、その場所にいる間の計画です。年度が替わり、場所が替わっても持ち越されるのは、保護者の手元にある1冊だけです。だから、新しく作り直すより更新して使い続けるほうが、結果として手間が減ります。

「わたしのトリセツ」は、こうした情報を項目に沿ってまとめておけるサービスです。内容を更新しても共有用のURLは同じままなので、渡し直すときに新しいファイルを作って送り直す必要がありません。紙で続けている方は、そのまま紙で構いません。新学期の引き継ぎについては新学期の引き継ぎ特集でも紹介しています。

完璧に保守しなくて、大丈夫です

最後にいちばん伝えたいことを書きます。

この資料に、締め切りはありません。更新が1年空いても、書きかけの欄が残っていても、それで支援が受けられなくなることはありません。札幌市のサポートファイルの案内も、「すべてのシートを埋める必要はありません。」「書きやすいところから始めましょう。」という立場です。埋まっていない前提で設計されているということです。

年に一度、まん中の段だけ見る。何かあったら、その部分だけ足す。できるようになったことは消さずに残す。渡すときは、変わったところを一言添える。

これで十分です。去年の自分が書いたものは、思っているよりずっと役に立ちます。書き直すのではなく、その上に1行足していってください。

参考にした情報

(各リンクの最終確認日: 2026年9月2日。法令・制度・様式は改定されることがあります。また、サポートファイルの有無・名称・様式、面談や書類提出の時期、学校や事業所の資料の運用には自治体差・学校差・事業所差があるため、詳細はお住まいの自治体や、通っている学校・園・事業所でご確認ください)

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